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サービス&プラットフォーム・マネージドサービスデジタルシステム&サービス

1. 生成AI活用で顧客のビジネス成長を加速する日立のプラットフォームソリューション

顧客のニーズや行動パターンの変化を把握し,市場競争に対応するには,柔軟で安全・安心なシステムの近代化が急務である。特に,生成AI(Artificial Intelligence)は世界中で急激に利用が広がっており,本カテゴリで取り上げるサービス&プラットフォーム・マネージドサービスも例外ではない。クラウドサービスプラットフォームBU(Business Unit)では,2024年4月に「生成AIアプリケーション&共通基盤室」を立ち上げ,生成AI基盤に関する全般的なサービス・ソリューションの提供を行っている。以下に,各取り組みの概要を述べる。

  1. 生成AI基盤
    この数年で,人々が生成AIを手軽に利用できるクラウド環境が提供され,生産性向上を目的に検証を始める事業者が急速に増加している。また,人財不足が予測される事業の持続可能性を高めるために,生成AIの活用も期待されている。一方で,本格的な業務適用にはまだ懸念もあり,検証段階で立ち止まるケースも考えられる。日立は,いち早く社内で利用を推進して実績を積み上げ,培われたノウハウを取り込んだサービスを提供し始めている。本番適用に向け,計画からシステム構築,継続的な運用といった一連の取り組みを支援する体制を整え,生成AI活用の支援を行う。
  2. データインフラストラクチャ
    日立は,常に新たなテクノロジーをプロダクトに取り入れ,ミッションクリティカルなデータ基盤構築に不可欠なプロダクトを開発・提供し続けてきた。今後も,生成AIの適用や,ハイブリッドクラウド環境で利用されるデータプラットフォームプロダクトの拡充,データセンターのカーボンニュートラル推進など,持続可能な社会を実現するために求められる多くのプロダクトを提供していく。
  3. システムインテグレーション
    誰もが安全・安心・便利で新しいシステムを利用できるデジタル社会を実現するため,顧客の重要な業務を支える基幹システムは,柔軟性や機敏性を備えるべくレガシーからの脱却が急務となっている。日立は,長年にわたるミッションクリティカルなシステムの構築・運用経験を生かし,オンライントランザクションシステムのモダナイズや,オンプレミスのデータ活用基盤のマルチクラウド活用を見据えた移行など,将来の基幹システムへの生成AI活用も想定しつつ,新たな技術やノウハウを駆使して顧客システムのITのモダナイゼーション支援を行っている。また,長年培ってきた生体認証の技術は,多くの市民が利用するサービスで課題となりがちなデジタルディバイドの解決手段として,複合事業を展開する社会インフラ事業者にも採用され,あらゆる顧客サービスに活用されている。
  4. マネージドサービス
    クラウド活用の伸展や生成AIの活用が進むにつれて ,オンプレミスにはなかったクラウド支出や使用量の最適化が課題として顕在化してくることが考えられる。日立は,クラウド活用を推進する顧客のビジネス価値向上に貢献すべく,クラウドのエキスパートによるコスト最適化も視野に入れた運用の改善提案を行っている。
  5. パートナリング/デジタル人財
    前述の取り組みは,一朝一夕に成し遂げられることではなく,先進的なテクノロジーパートナーとの協力と顧客との協創により実現できる。またその活動を支えるためには日立の豊富なデジタル人財の活躍が欠かせず,継続的な人財育成にも取り組んでいる。特に今後パートナーとの連携によりAIに関する研修をさらに強化していく。

サービス&プラットフォーム・マネージドサービスのカテゴリでは,昨今急速に進展する生成AIの活用が欠かせなくなりつつある顧客のミッションクリティカルなシステムを支えるために,日立が提供するサービス・ソリューションおよび関連する取り組みについて紹介する。

[1]顧客のビジネス成長を加速する日立のプラットフォームソリューション[1]顧客のビジネス成長を加速する日立のプラットフォームソリューション

2. 生成AI時代の先進テクノロジーパートナーとの協業推進

[2]生成AI時代の先進テクノロジーパートナー[2]生成AI時代の先進テクノロジーパートナー

日立は,さまざまな分野をリードするテクノロジーパートナーとの戦略的な協業を通じて,社会により良いインパクトを与え,持続可能な社会の実現に貢献していく。そこでは,急速に普及する生成AIと急増するデータセンター需要に関連するテクノロジーの重要性がさらに高まっていくと想定される。

近年,日立は多くのパートナーとの複数年にわたる協業を発表した。GPU(Graphics Processing Unit)をはじめ,AI活用に不可欠なインフラを提供するNVIDIA,メタバースや生成AIなどこれまで広い分野で日立と協業してきたMicrosoft,大規模言語モデルと先進的な生成AIサービスの充実したポートフォリオを持つGoogle Cloud,ハイブリッドクラウドソリューションで長年連携を深めてきたアマゾン ウェブ サービス (AWS),アジアを代表する通信大手で5G(Fifth Generation)などの次世代通信を手がけるSingtel,グローバルにデジタルインフラストラクチャとサービスを提供するEquinixなどである。

日立は,これらパートナーの先進技術と自社が保有するOT(制御・運用技術)やデジタルのケイパビリティの連携を通じてLumadaを進化させ,幅広い分野でのイノベーションを推進し,顧客や社会への新たな価値の提供をめざす。

3. AX-PJの中核を担うプラットフォーム「生成AI共通基盤」の展開

日立は,全社一体で生成AIの活用を加速させ,抜本的な業務改革を実現する「AIトランスフォーメーションプロジェクト(以下,「AX-PJ」と記す。)」を推進している。本プロジェクトの中核を担うプラットフォームが「生成AI共通基盤」である。

本基盤は,誰もが快適に生成AIアプリケーションを開発・実行できる共通のプラットフォームとして,開発支援やナレッジ・アセットの共有を行う「ナレッジ・支援ツール」,生成AIが推論を行う「生成AI実行環境」,専門業務に特化したLLMを構築する「生成AIモデル学習環境」で構成される。本基盤により,それらを共通アセット化したうえで日立グループ全セクター[CI(Connective Industries)/GEM(Green Energy & Mobility)/DSS(Digital Systems & Services)]および各グループ会社へ横断的に展開することにより,多くの部門・さまざまな業務での生成AIの適用が促進され,生産性向上を実現する。例として,システム開発/SI(System Integration)の効率化に向けた生成AI活用開発FW(GenAI System Development Framework),製品開発への適用,TWX-21コールセンター・日立サポート360でのカスタマーサービス向けの活用などのユースケースがある。今後,日立グループ内の活用から得られたナレッジを蓄積し,人財不足などに起因する顧客の課題や社会課題の解決に向けたサービスを展開していく。

[3]日立グループ全体での生成AI共通基盤活用と,蓄積したナレッジの顧客への展開[3]日立グループ全体での生成AI共通基盤活用と,蓄積したナレッジの顧客への展開

4. 業務特化型LLM構築・運用サービスと生成AI業務適用サービス

[4-1]静岡銀行との協創事例(2024/10/15ニュースリリースより抜粋)[4-1]静岡銀行との協創事例(2024/10/15ニュースリリースより抜粋)

日立は,IT領域からOT(Operational Technology)領域において合計約1,000件の生成AI活用の社内検証を進めている。昨今,生成AIへのニーズは,生産性の向上や業務効率化だけでなく,労働力不足による人財不足の解消や技能継承,企業の競争力強化といった本格的な業務適用へと変化してきている。

例えば,静岡銀行では,先進的なオープン勘定系システムと日立の知見・ノウハウを融合し,システム開発へ生成AIを適用する。具体的には,設計,製造,各種テストなどの開発プロセスのうち製造・ 単体テスト工程への適用検証から開始し,2025年度からの実用化,ならびにその後の適用範囲拡大をめざす※1)

このようなニーズや日立の社内実績を基に,日立は本格的な業務適用を支援する二つのサービスを提供している。業務特化型LLM(Large Language Models)構築・運用サービス※2)では,企業が保管している専門的な情報や過去の経験を学習したベテラン(有識者)のような役割を果たすAIを創り出すことで,複合的な専門知識を要する問いに対応できるようにする。本サービスは既に,日立社内における製品の専門的な知識学習による保守業務支援や,システム構築の設計工程におけるレビュー支援などに活用され始めている。また,生成AI業務適用サービスでは,業務のレベルに応じた生成AIの活用環境を提供しており,データのセキュリティレベルなどに応じてクラウド型とオンプレミス型を選択可能となっている。

今後,これらのサービスを社外にも展開していくことで,社会全体の生成AIの本格的な業務適用と人財不足の課題解決に貢献することをめざしている。

※1)
日立ニュースリリース,静岡銀行,静銀ITソリューション,日立が,」ミッションクリティカルなオープン勘定系システム開発への生成AI適用の実用化に向けた技術検証を開始(2024.10)
※2)
生成AI|Lumada:日立

[4-2]業務特化型LLM活用イメージ[4-2]業務特化型LLM活用イメージ

[4-3]生成AI活用プロフェッショナルサービス[4-3]生成AI活用プロフェッショナルサービス

5. 企業のAIインフラ対応を支援する「Hitachi iQ」

顧客独自のデータとの組み合わせなど,個々のビジネスに特有の専門知識を反映した生成AIの活用が重要になっている。

「Hitachi iQ」のAIインフラソリューションは,エンタープライズモデルから,ミッドレンジモデル,エントリーモデルまでの幅広いラインアップを取りそろえ,オンプレミス環境でビジネス規模に応じた最適な生成AIインフラの構築を可能にする。また,最新のNVIDIA GPU/AIプラットフォームと日立のストレージを組み合わせて,生成AI分野で求められる高いパフォーマンスを実現する。エンタープライズモデルはNVIDIA DGX BasePOD認定を取得するなど,大規模学習など大量データの高速処理に適している。ミッドレンジモデルは初期投資を抑えながら扱う学習や推論の規模に応じて柔軟なスケールアウトを可能にする。これらにより,機密性の高い企業データの生成AI活用を促進し,顧客のビジネス革新を支援する。

「Hitachi iQ」は,今後もGlobalLogicをはじめとした日立グループ各社が提供する各種サービスとの連携を強め,顧客の生成AI活用支援の範囲を広げていく。

(日立ヴァンタラ株式会社)

[5]AIインフラソリューション Hitachi iQ[5]AIインフラソリューション Hitachi iQ

6. 「JP1 Cloud Service」における生成AIを活用した運用オペレータによるアラート対応の初動迅速化

SaaS(Software as a Service)型運用管理基盤「JP1 Cloud Service」では,生成AIを活用して運用オペレータによるアラート対応の初動を迅速化できる生成AIアシスタントの提供を開始した。これにより,システムから発生したアラート(イベント・障害通知など)に対して,運用オペレータが適切な対処方法を判断する初動時間を短縮することができる。

なお,社内の実証実験において,アラート対処方法に関する生成AIの回答内容の正当性を評価し,9割以上※)のアラートで正しい対処方法を回答していることを確認した。また日立グループの運用監視業務において,初動の判断時間を約2/3に短縮※)できる効果を確認した。

近年,企業のIT部門は,企業活動のデジタル化をリードする役割を担っており,これまで人手に頼ってきた運用業務の効率化が急務となっている。長年にわたりミッションクリティカルなシステムの運用を支援してきたJP1は,こうしたIT部門の役割に寄り添い,運用管理基盤に生成AIやクラウド技術などの最新テクノロジーを取り込むことで,システム開発や運用を自動化し,企業や社会のイノベーションに貢献していく。

※)
実証実験において,複数の対応マニュアルをベースとした対処方法を回答させた場合(生成AIへの質問を複数回実施した場合を含む)。

[6]JP1 Cloud Serviceの生成AIを活用したアラート対応の概要[6]JP1 Cloud Serviceの生成AIを活用したアラート対応の概要

7. 日立のデータセンターにおけるカーボンニュートラル推進

[7]データセンター敷地内に設置したカーポートタイプの太陽光発電設備[7]データセンター敷地内に設置したカーポートタイプの太陽光発電設備

地球温暖化の進行により気候変動が激化する中,生成AIシステムの需要増などによって膨大な電力を消費するDC(Data Center)のカーボンニュートラル推進は持続可能な社会を実現するうえでの重要な課題である。

この課題に対し日立のDCでは,日立の環境長期目標である「2030年度までに事業所におけるカーボンニュートラル達成」をさらに前倒し,2027年度の達成に向けた取り組みを進めている。

2023年には非化石証書の調達に加えて,再生可能エネルギー設備を新たに導入する「追加性」のある取り組みとして,カーポートタイプの太陽光発電設備をオンサイトPPA (Power Purchase Agreement)を用いてDC敷地内の駐車場に導入した。あわせて再生可能エネルギーを利用したDCサービスの提供を開始し,顧客の環境経営を支援するとともに,DCのカーボンニュートラルを推進している。

今後も追加性を有する再生可能エネルギーの調達などの施策により,持続可能な社会の実現に貢献していく。

8. クラウド活用によるビジネス価値を最大化へと導くFinOps

グローバルにおけるクラウド業界では,単なるクラウドの活用から一歩先に進み,クラウドへ支払う料金に対して得られる価値を最大化するための運用フレームワークと組織文化的なプラクティスである「FinOps」の採用が企業にとって当たり前になりつつある。その一方で,日本国内では知名度も理解度も依然として低く,クラウド支出や使用量を最適化するFinOpsの継続的な改善活動は,エンジニアから時間を奪うだけの存在だと考える現場もいまだに多い状況である。

日立は,FinOpsの普及や標準化をグローバルで推進する非営利団体のFinOps Foundationへの参画を通じ,FinOpsの正しい理解と日本国内での普及促進をリードしていくとともに,FinOpsに精通するクラウドエンジニアリングのエキスパートの育成を進めている。

今後も日立は,本団体への参画を通じて得られた最新のFinOps技術や実践ノウハウ,育成したエキスパートによる継続的なコスト最適化を支援する「Hitachi Application Reliability Centers(HARC)サービス」の提供を通じて,企業のクラウド活用によるビジネス価値の最大化へと貢献していく。

[8]FinOpsフレームワーク概要[8]FinOpsフレームワーク概要

9. 「2024 AWS Ambassadors」など4部門で日立社員が選出

[9]「AWSパートナーネットワーク」授賞式前日の撮影会[9]「AWSパートナーネットワーク」授賞式前日の撮影会

日立製作所は,アマゾン ウェブ サービス(AWS)のパートナープログラムにおいて,2024年の「AWS Ambassadors」,「Japan AWS Top Engineers」,「Japan AWS Jr. Champions」,「AWS Japan AWS All Certifications Engineers」の4部門で合計29名の社員が表彰された。AWSの技術的専門知識を持ったエンジニアが選ばれ,社内外での貢献が評価されている。

日立は,これまでクラウドエンジニア育成に力を注ぎ,AWSの資格取得やトレーニングを支援する仕組みを整備するとともに,DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するための重要なリソースとして活用してきた。また,2024年にはAWSとの新たな戦略的協業を開始し,顧客のシステムモダナイゼーションやクラウド移行を支援する活動をさらに強化していく。今後も,AWSとの連携を深め,顧客のDX推進を技術力で支えていく。

10. 基幹システムの安定性を維持しながらオンライントランザクションシステムのモダナイズを加速

日立は,金融・交通・電力といった社会インフラを支えるミッションクリティカルな基幹システムの安定性を維持しながら,オンライントランザクションシステムのモダナイズを加速する「Hitachi Microservices Platform-Paxos Commit Transaction Orchestrator」の提供を開始した。

金融取引などの欠損が許されないデータを扱うオンライントランザクションシステムでは,ACID(Atomicity,Consistency,Isolation,Durability)を伴うデータ更新の信頼性が重要である。この信頼性を維持するためには,ITシステムの故障や分断に対して繊細に制御する必要がある。一方で,昨今ITシステム運用で主流になりつつあるクラウドやマイクロサービスのような分散型アーキテクチャは,ITシステムの先端技術に接続しやすい反面,モノリス構造のオンプレミスよりも故障・分断の影響が複雑になり,故障や分断の制御をさらに検討する必要がある。このような課題がクラウド移行を伴うモダナイズを遮り,オンライントランザクションシステムとその周辺技術がレガシー化するという課題があった。

本製品を活用することで,難易度の高いオンライントランザクションシステムのクラウドでの開発・運用を大幅に簡素化し,これまで実現が困難だった当該システムに対するクラウドネイティブ技術の適用を可能にする。本製品を中核として,エンタープライズシステムのモダナイゼーションをサポートしていく。

[10]Hitachi Microservices Platform-Paxos Commit Transaction Orchestrator[10]Hitachi Microservices Platform-Paxos Commit Transaction Orchestrator

11. ITモダナイゼーションにおけるマルチクラウド活用を見据えた実証検証と顧客適用

[11]基幹システムを想定したマルチクラウド検証の内容[11]基幹システムを想定したマルチクラウド検証の内容

日立は,日本オラクル株式会社と共同で基幹業務向けマルチクラウド構成の検証を実施した。具体的には,OCI(Oracle Cloud Infrastructure)とMicrosoft Azure(以下,「Azure」と記す。)のマルチクラウド構成で,基幹業務を想定した処理性能や可用性の観点で検証を実施し,大量トランザクション処理において十分な処理性能を得られることと,バッチ処理のデータ量に応じた適切なチューニング方法などを確認した※1)。日立はこの知見の活用によりクラウド環境への移行支援を強化し,顧客の業務基盤のモダナイズを支えていく。

日立は2024年よりマルチクラウド環境への移行支援サービスの提供を開始しており,データ利活用基盤の構築に対して顧客からから高い評価を得ている※2)。2024年9月には,この結果を受けオラクルよりグローバルで最も優れたパートナーを表彰する「Regional Best in Class Award in Customer Success」を受賞した※3)

基幹システム分野においてますます増えるマルチクラウドのニーズに対し,クラウドベンダ各社との検証を継続強化し,価値の高いソリューションを提供していく。

※1)
「日本オラクルと実施した基幹業務向けマルチクラウド構成の共同検証結果をもとに,クラウド移行支援を強化」
※2)
みずほリースが3ヵ月で全社規模のデータ活用基盤を構築できた理由とは?プロジェクトの裏側を振り返る
※3)
「2024 Oracle Partner Awards」のグローバルで最も優れたパートナーを表彰する「Regional Best in Class Award in Customer Success」を受賞

12. 生体認証を利用したデジタルアイデンティティプラットフォーム

デジタル技術の社会インフラへの適用が着実に進行する中,幅広い分野に適用可能で,他人の成りすましや年齢確認商品の提供,キャッシュレス決済におけるデジタルディバイドといった課題の解決策の一つとして,生体認証技術が注目されている。これらの社会課題の解決をめざし,東武鉄道株式会社と日立は「生体認証を活用したデジタルアイデンティティの共通プラットフォーム」の普及を推進している。指静脈認証技術やPBI(Public Biometric Infrastructure:公開型生体認証基盤)など,日立が長年研究開発で培った技術力と,東武グループの鉄道,流通,ホテル,アミューズメント施設など,さまざまなサービスを提供する事業者の知見を融合し,2024年4月より東武ストア3店舗で,生体認証サービス「SAKULaLa」をスタートさせた。

2024年10月現在,東武ストアを含む小売店8店舗において,5,000名以上が本サービスを利用中である。本サービスが社会インフラとして定着していくためには,利用者,利用可能施設ともにさらなる充実が必要だと認識しており,今後,「生体認証」を利用して手軽に「デジタルアイデンティティ」を開示できるサービスとして,業種にとらわれずより多くの生活シーンで利用できるようになることをめざす。

[12]生体認証を利用したID利活用の概要[12]生体認証を利用したID利活用の概要

13. アーキテクチャを刷新したVSP One次世代ミッドレンジストレージ

生成AI活用などにより企業が扱うデータが増大する中,大量データの保持・利活用を支える効率性と環境への配慮,ビジネスを支える信頼性を備えたストレージが求められている。

次世代のミッドレンジストレージHitachi Virtual Storage Platform One(以下,「VSP One」と記す。) 2U Block Applianceは,アーキテクチャを刷新し,革新的なストレージ技術によって,増大するデータ管理の効率を高めた。具体的には,高い圧縮率を実現する新アルゴリズムの採用で,平均75%※1)のデータ削減率を実現した。また,日立独自の圧縮アクセラレータハードウェアの強化※2)などにより,機能利用時のI/O(Input/Output)性能を約2倍※3)に向上させ,高いデータ削減率と高性能を両立した。さらに,データ保護機能の強化や環境配慮にも取り組んでいる。

日立ヴァンタラ株式会社は,今後も,オンプレミスとクラウド上のデータを一元化するハイブリッドクラウド・データプラットフォームVSP Oneを拡充し,顧客の安全・安心かつ容易なデータ利用に貢献していく。

(日立ヴァンタラ株式会社)

[13]新ストレージ(VSP One 2U Block Appliance)の特長[13]新ストレージ(VSP One 2U Block Appliance)の特長

※1)
「VSP One Block 28(以下,「B28」と記す。)」のデータ圧縮・重複排除を有効にした場合のデータ削減率。
※2)
専用のハードウェアでデータ圧縮を行うことで,データ圧縮率を高めながら処理性能を維持する独自技術(関連特許:米国特許第11,294,578号,米国特許第11,119,702号,米国特許第11,625,168号)。
※3)
従来モデル「VSP E790」と「VSP One B28」の圧縮・重複排除を有効にした場合のスループット性能実測値(Random Read(32K)IOPS)を比較。

14. 自律走行する業務DXロボットを使った工場点検の自動化サービス

ugo株式会社,株式会社日立プラントサービス,株式会社日立システムズは施設運用全体の適正化への貢献を目的として,業務DXロボットを使った工場点検作業の自動化サービスの共同開発に取り組み,2024年5月にサービスの開発を開始した。

本サービスは,業務DXロボットが工場内を巡回して設備を点検するとともに,点検で収集したデータの分析を通して設備運用の効率化を目的とするものである。具体的には,ugoの自律走行と遠隔操作のハイブリッド型業務DXロボット「ugo」が工場内を巡回し,「ugo」に搭載された各種センサーと日立システムズの「CYDEENメーター自動読み取りサービス」により,工場内の温度・湿度などの環境データや計器メーターの値を自動で取得する。取得したデータに日立プラントサービスが60年にわたって現場で培った大規模工場の保守ノウハウを融合させることで,熟練技術者の技術の継承,エネルギー効率の改善や故障の予兆検知などの設備運用の効率化に貢献する。

(株式会社日立システムズ)

[14]業務DXロボットを使用した工場点検作業の自動化[14]業務DXロボットを使用した工場点検作業の自動化

15. 生成AIの有効性検証を支援するパッケージ「おてがる生成AIパック」

日立システムズは,市場の急成長に合わせて,生成AIの導入を検討している企業などに向けた生成AIの有効性検証を支援するパッケージ「おてがる生成AIパック」を2023年12月に提供開始した。本パックは,Microsoftの「Azure OpenAI Service」を基盤に,生成AIに触れたことがないユーザーでも直感的に利用できるシンプルなUI(User Interface)を実装したサービスである。業務効率化に向けて,生成AIを導入したい顧客に対し,社内環境に存在するデータも参照可能な有効性検証のための専用環境を短納期(最短1か月)・低価格で構築する。

今後も自治体向け生成AI,金融向け生成AIなど業種に特化したプロンプトテンプレートやWebUIモデルを提供し,生成AI導入支援サービスでサービス精度向上などのニーズに細やかに対応していく。さらに,本番環境から企業での活用定着化・業務拡大まで生成AIの活用促進をトータルでサポートすることで,顧客の生成AIの活用,DX推進を支援していく。

(株式会社日立システムズ)

[15]おてがる生成AIパックの構成[15]おてがる生成AIパックの構成

16. ガバメントクラウド移行期限に向けた現場のSE不足解消を支援

日立システムズはこれまでの自治体との取り組みで蓄積したガバメントクラウドに関する知見を生かし,社会に広く貢献するため,日立 自治体ソリューション「ADWORLD」※1)を既に利用している自治体はもちろんのこと,それ以外の自治体に対しても,ガバメントクラウドへのリフト・運用・ネットワーク関連の支援※2)を2024年8月に開始した。

具体的な支援内容は以下のとおりである。

(1)ガバメントクラウド向けリフト支援およびリフト後の運用支援
仮想空間やネットワーク,各種セキュリティなどのクラウド環境設定から,OS(Operating System)環境の構築など,分野ごとに専門部署が連携して高品質なクラウド環境を提供する。また,「運用管理補助者」として,ウイルス対策,OSパッチ更新,システム監視,ジョブ環境提供など,デジタル庁・総務省が求めるさまざまな非機能要件を満たす運用サービスを提供する。
(2)マルチベンダ構成における日立システムズの支援
マルチベンダ構成で必要とされる「ネットワークアカウント兼運用管理補助者」として,ネットワーク管理,更新サーバー管理,データ連携環境の構築を担う。
(3)ガバメントクラウドへの個別回線接続の支援
自治体庁舎とガバメントクラウド間を専用の閉域網で接続する「個別回線接続」の敷設を含めた提案が可能である。

これらにより,ガバメントクラウドへの移行を控える自治体に対して,安全なリフト・運用・ネットワーク関連の支援を行い,期限内の移行完了を支援するとともに自治体職員の負担を軽減し,住民の利便性向上や行政の効率化に貢献していく。

(株式会社日立システムズ)

※1)
日立グループが長年培った自治体システムの豊富な経験と最新の技術を結集した,トータルソリューション。標準化対象業務20業務について,国の示す標準仕様書に準拠したシステムを提供している。
※2)
対象とするクラウドサービスは2024年8月5日時点ではAWSを前提としている。

[16]日立システムズによるガバメントクラウド向けリフト・運用・ネットワーク関連ソリューション[16]日立システムズによるガバメントクラウド向けリフト・運用・ネットワーク関連ソリューション

17. サイバーセキュリティソリューション「SHIELD」の強化

日立システムズは,2024年3月にマネージドサービス事業のサービス体系「Hitachi Systems Managed Services」※1)を構成するサイバーセキュリティソリューション「SHIELD」のサービスメニューを強化した。平時から有事の際までのセキュリティ対応全般の指針を体系的に定義しているNIST CSF※2)に基づき,顧客のセキュリティ業務を7カテゴリ25業務に分類し,顧客が業務を行ううえで必要となるセキュリティ対応をプロセスとして整理した。また,顧客が必要なセキュリティサービスを選択しやすくなるよう,各プロセスに日立システムズのサイバーセキュリティソリューション「SHIELD」の全サービスをひも付け体系化した。

この中で,日立システムズはコンサルティングから導入支援,監視運用まで網羅的に提供可能であるため,顧客はセキュリティ全般の相談を日立システムズに一本化することができ,セキュリティ対策のトータルコスト削減や導入期間短縮が可能となる。

特にインシデント対応として,SOC(Security Operation Center)サービス,脆弱性管理サービス,CSIRT(Computer Security Incident Response Team)支援サービスの三つのサービスの提供を開始し,顧客のインシデント対応時間を短縮した。三つのサービスは組み合わせて利用することにより,インシデントの一元管理と効率的な対応が可能であり,相乗効果が期待できる。

また,ITアセットのセキュリティからOTアセットのセキュリティへ対象領域を拡大させ,社会インフラの保護や顧客のサイバーレジリエンス向上にさらに貢献できるよう,マネージドセキュリティサービス事業の拡大をめざしていく。

(株式会社日立システムズ)

※1)
「Hitachi Systems Managed Services」は以下の3分野のサービス群で構成される。(1)セキュリティ構築・監視・運用を行うサイバーセキュリティソリューション「SHIELD」。(2)マルチクラウド環境,ネットワーク,データセンターなどの構築・監視・運用を行うマルチクラウドソリューション「Gateway for Business Cloud」。(3)コンタクトセンター(CC)とBPO(Business Process Outsourcing)により顧客の業務運用支援を行う「CC&BPO」。
※2)
米国国立標準技術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)より公開されたサイバーセキュリティフレームワーク。

[17]セキュリティ業務を網羅する七つのカテゴリ[17]セキュリティ業務を網羅する七つのカテゴリ