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原子力グリーンエナジー&モビリティ

1. 現場拡張メタバースを用いたプラント建設現場従事者支援

プラント建設現場では少子高齢化,熟練者減少,労働災害などが大きな課題になっている。そこで,現場をデジタルツイン化し遠隔地から現場状況を把握して現場従事者を支援する「現場拡張メタバース」を開発した。

現場拡張メタバースには,「現場」で「現物」を見て「現実」を認識するという考え方に基づく「三現主義」を拡張する意味が込められており,建設業のような現場中心プロジェクトに革新を起こすものである。現場には足場などの仮設物が多数存在し,これらに起因する作業干渉や労働災害リスクが発生する。現場拡張メタバースではプラントの3D(Three Dimensions)モデルに加えて日々変化する仮設物も含めた空間モデルを生成するために,低解像度で操作性に優れたモデル生成技術を確立した。また,生成した空間に蓄積した現場データをAI(Artificial Intelligence)が複合的に解釈し,現場従事者が直感的に理解できる設計情報や工事の進捗,安全管理などの施工情報を提示する仕組みを構築した。これにより,計画・設計・建設・運用・保全など各業務プロセスでの情報共有や合意形成を革新することができる。

(株式会社日立プラントコンストラクション)

[1]プラント建設・管理における現場拡張メタバースによるデジタルトランスフォーメーション[1]プラント建設・管理における現場拡張メタバースによるデジタルトランスフォーメーション

2. ロバスト撮像とAIを用いた炉内遠隔目視試験システム

原子炉圧力容器の炉内点検の検査時間短縮と検査作業の支援を目的に,ロバスト撮像技術と人工知能(AI)を用いた遠隔目視試験システムを開発中である。ロバスト撮像技術は,位相板で焦点ずれに不感なボケを与え,画像処理で復元することで,従来よりもカメラの被写界深度を拡大する技術である。この技術を用いることで,カメラの位置・姿勢の制約を減らし,狭隘・複雑形状部位の点検を容易化できる。

さらに,試験対象表面での反射光と拡散光をバランスさせる照明によって,亀裂を際立たせる映像を取得することが可能である。また,AIの活用という観点からは,既知の目視試験映像を対象として亀裂識別の学習をしておき,検査時に評価対象映像から学習済みモデルを用いて推論を行い,亀裂候補を識別することで検査員を支援する。今後,これらの技術を実装した実用的なシステムを開発し,実機プラント点検への適用をめざす。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[2]ロバスト撮像とAIを用いた炉内遠隔目視試験システム[2]ロバスト撮像とAIを用いた炉内遠隔目視試験システム

3. MRを活用した現地検査合理化によるプラント建設のDX推進

近年のプラント建設現場では,人手不足や総労働時間規制などを受け,デジタル技術の活用による生産性向上が求められている。本取り組みでは,建設時の埋込金物の検査に着目し,合理化策を検討した。従来の検査では,壁の施工後に作業員が図面と埋込金物の施工状況を一つずつ目視確認しており,検査に時間を要するとともに,図面との相違箇所の見落としによる後工程の工期延伸が発生していた。そこでMR(Mixed Reality)を用いた埋込金物の検査システムを構築した。

本システムは市販のMR用ソフトウェアおよびデバイスを用い,平易な手順で埋込金物の図面を現場へ投影し,投影結果を記録する。図面と施工状況の整合性を瞬時に判別することで検査期間の短縮が期待できるほか,投影記録のダブルチェックなどにより図面との相違箇所の見落とし低減が期待できる。また,埋込金物の施工ずれを踏まえて配管サポートなどの構造にタイムリーに反映可能となる。顧客に対しても,建設工期の長期化および仕損費発生に係るリスク低減の観点で価値を提供できる。今後,新規施設を設置する際に本システムを幅広く実装することをめざす。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[3]MRを用いた埋込金物投影による現地検査の合理化[3]MRを用いた埋込金物投影による現地検査の合理化

4. 柔構造作業ロボット「HUMALT」

東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置における高放射線環境下において,人が行う繊細な作業を代替できる柔構造作業ロボット「HUMALT(ヒューモルト)」を開発している。HUMALTはロボット本体に電子部品を使用しないため高放射線環境下での長期間の使用が可能であり,作業対象物に対して関節側が柔軟に屈曲・旋回する「柔らかい」構造を有したロボットシステムである。

また,HUMALTを遠隔で操作する際のオペレータの負荷軽減のため,遠隔作業支援システムを開発している。このシステムは自律移動制御機能とアーム手先位置制御機能に基づくデジタル空間上での作業状況の再構成,および把持対象物認識機能を組み合わせたもので,遠隔作業におけるHUMALTの操作性の向上に資するものである。

HUMALT,および遠隔作業支援システムの実用化を進め,福島第一原子力発電所の安全で確実な廃止措置に貢献していく。

(日立GEニュークリア・エナジー株式会社)

[4]HUMALT 関節モジュール構成[4]HUMALT 関節モジュール構成