インダストリアルプロダクツコネクティブインダストリーズ
1. 超大型クローラクレーン駆動用高圧インバータのコネクテッド実証完了
株式会社日立インダストリアルプロダクツは,株式会社タダノの超大型クローラクレーン電動化プロジェクトに参画し,CO2排出量抑制のキーコンポーネントとして,世界最小クラスの高圧ダイレクトインバータHIVECTOL「HVI-E2シリーズ」を提供した。
重量物作業を行う移動体であるクローラクレーンに搭載したインバータは,迅速な保守対応が極めて重要であり,専門人員の派遣に依存しない技術の確立が求められる。
そこで今回,「コネクテッド機能」として,インバータの長期稼働データを保存・分析する機能と,日立から顧客先インバータにリモート接続して保守用に監視・操作可能な機能を開発した。
本実証では,遠隔での運転データ取得やソフトウェアアップデートを行うことで,人員派遣なしでも迅速な保守や故障データの解析が可能であることを確認した。
今後は本機能の製品化を行い,各負荷の運転パターン分析などを行うことによって,負荷状態診断などさらなる機能拡張を実施し,顧客課題の解決に貢献していく。
(株式会社日立インダストリアルプロダクツ)
2. マルチポートEVチャージャを活用したWorkplace E-Poweringの運用開始
日立インダストリアルプロダクツ土浦事業所において,通勤EV(Electric Vehicle:電気自動車)によるCO2削減の取り組みとして「WEP(Workplace E-Powering) 」の運用を開始した。WEPは職場にEV充電環境を設置することにより従業員のEV導入を促進するもので,自宅にEVの充電環境がない従業員でもEV導入が容易となり,企業としては,事業者によるサプライチェーン排出量算定に定められたScope 3 カテゴリー7「通勤移動」に相当するCO2排出量の削減を図ることができる。多数のEVが比較的長時間駐車することになるWEPの設備構築にあたっては,日立インダストリアルプロダクツの大容量マルチポートEVチャージャを設置するとともに,設備を有効利用するためのマルチコネクタ充電スタンド(25 kW)を開発し,適用した。本充電スタンドは,4台のEVに充電ケーブルを接続でき,充電対象を自動的に切り換えながら4台のEVを充電できる。これにより,20ポートのマルチポートEVチャージャと組み合わせることで,最大80台のEV充電駐車場を構築できる。
今後,本運用で得られた技術的および制度的なノウハウも活用しながら,日立グループ内外への導入拡大を図っていく。
(株式会社日立インダストリアルプロダクツ)
3. 東京都環状第2号線築地虎ノ門トンネル換気設備納入
東京都環状第2号線築地虎ノ門トンネル築地換気所へ,直径3000 mmの排風機(動翼可変軸流ファン)2台および電気集塵機一式,およびトンネル内ジェットファンと計測設備一式などを納入した。
築地虎ノ門トンネルは2014年3月に一部区間が開通し,築地換気所の完成に伴い2022年12月全線開通した。都心部を横断する築地虎ノ門トンネルの周囲には公共施設,医療施設,商業施設などがあり,トンネル坑口周辺部の環境保全を目的に換気設備が設置されている。トンネル内の情報は,計測設備を通じて常時監視されており,自動車から発生する排気ガスがそのままトンネル外へ漏れ出すことを抑制するため,築地換気所にて集中換気を行っている。トンネル内の排気ガスは換気所内で電気集塵機により浄化され,排風機を通じて換気塔から屋外へ排出される。
日立インダストリアルプロダクツは,今後も自動車走行の安全性と快適性およびトンネル坑口周囲の環境を考慮したトンネル換気設備を提供していく。
(株式会社日立インダストリアルプロダクツ)
4. Braskem S.A.納め 圧縮機性能改造機器
日立インダストリアルプロダクツは,ブラジルのBraskem S.A.が操業するグリーンエチレンプラント※)の生産能力を約30%向上させる改造計画において,自社製の既設圧縮機の処理能力を増強する改造プロジェクトを受注した。5R(Repair,Reuse,Rebuilt,Remanufacturing,Recycle)に大きく貢献する提案を行い,多くの圧縮機部品や付帯設備は既設のまま流用しながら,圧縮機内部の改造部品のみを新規製作して納入した。顧客プラントにて圧縮機内部改造部品の交換作業が行われ,この度,商用運転を開始した。
本改造プロジェクトを通じて,環境負荷を低減しつつ省コストでプラント増産に寄与し,顧客の経営目標の実現に貢献した。製品・サービスに加え,こうしたソリューションの提供を通じて,今後も引き続き,持続可能な社会の実現と顧客の社会価値,環境価値,経済価値の向上に貢献していく。
(株式会社日立インダストリアルプロダクツ)
(商用運転開始:2023年4月)
- ※)
- 従来のナフサを原料とした製法に代わり,環境に配慮してサトウキビ由来のエタノールを原料としてエチレンを生産するプラント。
5. 生産ラインにおけるEdge AI Machine Visionの導入
一般的なAI(Artificial Intelligence)の学習・推論には正常/異常の両方のデータが必要である。しかし,AIを活用した日立の自動検査機「Edge AI Machine Vision」では,独自のAI診断アルゴリズムにより,正常品データのみで学習するため異常品データが不要である。また,AIの学習プロセス/推論プロセスに必要なハードウェア/ソフトウェアを搭載しており,商品ごとの複雑な条件設定作業や,画像データを取り込んでAI に学習させる専用システムの設定が不要で,本体一つでシームレスな現場学習とリアルタイムな推論を実行することができる。
Edge AI Machine Visionを導入した生産ラインでは,学習後,推論から得られる正常分布を基に正常/異常の閾値を顧客と協議のうえ設定する。この閾値は,運用基準に合わせて顧客自身で調整することも可能である。検査対象の変更・追加・削除も,設定・操作用タブレットから顧客自身で実施することができる。今後も,生産ラインへのEdge AI Machine Visionの適用を通じてフロントラインワーカーの生産性を向上し,社会の要請に応えていく。
(株式会社日立産機システム)
6. 配電用変圧器向け オンライン常時監視ソリューション
暮らしやビジネスに欠かせない電力の供給において重要なインフラである受変電設備には,安定した電力の供給が求められる。株式会社日立産機システムは,受変電設備の中でも重要機器である油入変圧器の内部状態を常時監視するソリューションの提供を開始する。
一般的に油入変圧器の予防保全は,停止中に絶縁油を採取して行う油中ガス分析が用いられるため,実施頻度が低い傾向にある。高経年化した油入変圧器は使用状況によりダメージを受けている場合があり,点検の間隔次第では異常を発見することができず,事故や停電につながるほか,設備損傷や費用損害のリスクもある。
そこで,内部異常の初期段階で発生する水素ガス濃度の変化をリアルタイムにセンサーで監視し,異常をいち早く検知する技術を開発した。計測データを設備監視サービス「FitLive」を通じて管理し,顧客・メーカー双方で状況を確認することで,迅速に点検や更新の提案を行い,信頼性向上と保全コスト削減を実現する。
(株式会社日立産機システム)
7. 受変電設備保安業務向け スマート保安サービス
電気を工場やビルなどに提供する際,遠隔監視で受変電設備の点検や保安業務を省人化・効率化する「スマート保安サービス」の提供を開始した。近年,EVの普及や生成AIの利用拡大によるデータセンター新設などにより電力需要が増加する一方,受変電設備の定期点検や保安業務を担う保安員は人手不足が課題となっている。
日立産機システムのスマート保安サービスは,絶縁監視および温湿度などのセンサーによる機器の常時監視を行うほか,日立産機システム独自の設備監視サービス「FitLive」のプラットフォームを活用して稼働状況をリアルタイムで確認することができる。例えば,絶縁劣化の傾向を常時測定することで絶縁抵抗値確認を代替し,絶縁抵抗測定試験の実施間隔延長に貢献できる。監視に必要な機器をキット化して導入時の工事を簡略化したパッケージタイプと,カスタマイズ可能なオーダーメードタイプの2種類をラインアップしており,さまざまなニーズに対応可能である。
(株式会社日立産機システム)
8. 新型ACサーボAD7-MEGAシリーズ
AC(Alternating Current)サーボAD7-MEGAシリーズは,工作機械,産業用ロボット,半導体製造装置などのさらなる高性能化・多様化の市場要求に応える新型サーボアンプである。今回,200 V級2 kWから45 kW以下を製品化した。主な特長は以下のとおりである。
- 高速同期制御が可能なオープンネットワークEtherCAT*を標準搭載し,通信周期を高速化※)したことで,よりきめ細かい動作を実現した。
- 汎用接点入力やアナログ電圧入力を標準搭載したことで,外部センサー入力などの接続利用を可能とした。
- 通信可能なエンコーダを拡充したことで,多様なモータとの組み合わせることができる。
- 操作ソフトウェアを改良することで,装置のセットアップ時間を短縮した※)。
- STO(Safe Torque Off)機能を向上した[EN(European Norm)/ ISO 13849-1 Cat.3 PL d,EN 61800-5-2 SIL 2(STO)からEN / ISO 13849-1 Cat.3 PL e,EN 61800-5-2 SIL 3(STO)に対応]。
(株式会社日立産機システム)
(受注開始時期:2024年7月)
- ※)
- 日立産機システム製現行機比。
9. 天然由来原料を活用した産業用インクジェットプリンタ用有機則溶剤フリーインク
日立産業用インクジェットプリンタGravis UX2 Seriesは,高付着性・速乾性など,印字対象や用途に応じて多彩なインクバリエーションをラインアップしている。近年,使用者の作業安全・健康被害の予防や,地球環境への配慮の観点から,世界的に化学物質の安全性・環境負荷低減に関する法規制の強化が進んでいる。こうした中,日立産機システムでは,有機溶剤中毒予防規則(有機則)で定められている対象物質の使用を最小限に抑えるなど,市場要求に対応したインクの開発を進めてきた。
2023年12月に発売した有機則溶剤フリーインク「4158K」は,有機則に指定されている溶剤を含有せず,天然由来原料を活用した点が特長である。それに加え,連続2,400時間という長寿命,低い溶剤揮散量[2.0 ml/h(20℃)],ポリプロピレン・ポリエチレンといった難付着材への高付着性,消毒用エタノールへの耐性といった高機能で好評を博している。
(株式会社日立産機システム)
10. 給油式空気圧縮機用廃熱回収ユニット
従来,空気圧縮機は運転時に発生する熱の大部分を大気に放出していたが,この廃熱の有効活用が課題となっていた。
2023年7月,日立産機システムは,エネルギーコスト上昇やカーボンニュートラルへの対策に資する製品として,日立給油式スクリュー圧縮機HISCREW NEXT II/III およびG series 55~75 kW機に接続可能な給油式空気圧縮機用廃熱回収ユニットを発売した。主な特長は以下のとおりである。
- 圧縮機の高温潤滑油から熱回収し,最高70℃の温水を供給可能である※1)。
- 既設圧縮機にも後付け設置が可能である※2)。
- 狭小スペースへの設置の要望に応えるため,圧縮機左側面への密接設置が可能である。
- ユニット内部に断水検出器を備え,断水時でも圧縮空気を継続して供給可能である。
今後,他の機種へもシリーズ展開を図っていく。
(株式会社日立産機システム)
- ※1)
- 循環加温システムの場合など条件あり。
- ※2)
- 改造作業は別途必要。
11. 無給油式往復動圧縮機「Rシリーズ」
空気圧縮機は工場設備のエネルギー供給に不可欠な存在であり,その消費電力は工場全体の約2割を占めると言われている。特に気温とともに空調電力もピークを迎える夏場の工場運営において,空気圧縮機の安定稼働と省エネルギー化は重要な課題である。加えて近年では,こうした設備管理においても人手不足に伴う省力化が求められ,解決策としてIoT(Internet of Things)活用の意識が高まっている。
こうしたニーズに対応するため,「オイルフリーベビコンRシリーズ(1.5, 2.2, 3.7 kW)」を発売した。最大の特長は高周囲温度対応であり,新開発の「ヒートシールドピストン」を搭載することで,従来の設置環境温度上限40℃を,タンクマウントタイプで50℃まで引き上げた。
さらに省エネルギー,IoT活用の観点では,新制御方式の搭載によりパッケージタイプで最大15%消費電力を低減したほか,スマートデバイスアプリ経由で稼働情報をクラウドサーバへ送信・共有することで,設備管理工数を低減した。
(株式会社日立産機システム)