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Abstract

研究開発

近年,地球温暖化を超えた地球沸騰化や,生物多様性に関する課題の提起,サイバーセキュリティの脅威の高まりなど,環境,地政学,社会経済,資源リスクなどが相互に絡み合う,ポリクライシスへの対応が求められている。このような複雑な社会課題の解決に向けて,日立グループは,「社会をより良くしたい」という意志と行動力を源泉に,顧客との協創による社会イノベーションの創生に取り組んでいる。

イノベーション創生の根幹を担うコーポレート研究開発の取り組みとしては,「顧客体験を革新するイノベーション」と「社会の本質的課題を捉えたイノベーション」を実現するイネーブリングテクノロジーの開発に注力するとともに,グローバルな知財活動を「価値起点」で推進している。これらの活動を基に,事業部門と連携しながらLumada成長モデルを進化させ,One Hitachiで新たな価値を創生し,顧客と共にサステナブルな成長を実現することをめざしている。

顧客体験を革新するイノベーションへの取り組み

顧客の次の経営課題を解決するために,日立独自の顧客協創方法論「NEXPERIENCE」 を拡張し,イノベーションを進めている。顧客を取り巻く環境や新たな社会の変化の「きざし」を捉え,そこから導かれるユーザー価値を深く理解するための対話を重ねながら,成長に向けたシナリオを顧客と共に描く。この成長シナリオの実現に向けて,各事業部門と連携しながらIT×OT(Operational Technology)×プロダクトの知識に支えられたデジタルソリューションを開発し,顧客に提供する。顧客とのオープンイノベーション拠点である「Lumada Innovation Hub Tokyo」や「協創の森」の環境を用いてリアルに体験してもらうことで協創を加速し,顧客の成長とLumada 事業の拡大に貢献する。本章では以下の具体的な取り組みを示す。

グローバル協創,スタートアップ連携の分野では,フランス国有鉄道との作業者安全向上に向けたPoC(Proof of Concept),米国におけるインダストリアル分野へのAI(Artificial Intelligence)活用事例,日本国内における各地域での協創事例などを紹介する。

デジタルシステム&サービス分野では,社会インフラ保守やサプライチェーンにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション),インフラ管理の革新とドメイン特化が求められるセキュリティ技術,生成AI技術などを紹介する。近年,グローバルで注目を浴びている生成AIの活用は,さまざまな社会の変化をもたらしている。日立では,マネージドサービス,コネクテッドプロダクト,システムインテグレーションなどの領域における労働生産性の革新と,デジタルエンジニアリングによる人が輝ける新しい働き方の実現をめざし,透明性とアカウンタビリティにより信頼を担保しながら活用に向けた技術開発を推進している。生成AIの取り組みについても,併せて紹介する。

グリーンエナジー&モビリティ分野では,AI技術を用いた電力系統安定化,カーボンニュートラルに向けた水素社会への取り組み,鉄道車両の保守省力化技術などを紹介する。

コネクティブインダストリーズ分野では,生産現場の最適化と効率化,家電向けソリューション,革新プロダクト,材料基盤技術に関する取り組みなどを紹介する。

社会の本質的課題を捉えたイノベーションへの取り組み

イノベーションを牽引するR&Dの取り組みイノベーションを牽引するR&Dの取り組み

2050年のあるべき社会の姿からバックキャストし,「環境中立社会」,「現役100年社会」,「デジタルと人・社会の共進化」の実現に向けて取り組んでいる。スタートアップ企業への投資や先進的な研究機関・大学との共同研究によりイノベーション創生のエコシステムを構築し,顧客の将来の経営課題解決につなげる。具体的に,「環境中立社会」では(1)電力・ガス・水素の統合流通,(2)CO2の価値資源転換,「現役100年社会」では(3)粒子線治療の開発,(4)細胞のデザイン・製造・検査の開発,「デジタルと人・社会の共進化」では(5)デジタルオブザーバトリの実現,(6)量子コンピューティングの応用の六つのテーマを推進している。これらの実現に向けて,エネルギー変換やバイオテクノロジー,AI,量子コンピューティングの開発を進めている。

本章では,水素輸送技術,Direct Air Capture,カーボンニュートラルに向けた提言活動,細胞創薬・製薬に向けた取り組みやシリコン量子ビットの制御技術,デジタルオブザーバトリへの取り組みなどを紹介する。

イノベーションを支える知的財産戦略

知的財産活動においては,ビジョンとして「知財を活用して社会課題解決とDX/GX事業成長を実現するグローバルリーダー」を掲げ,「IP driven Social Innovation」をコンセプトに,グリーン,デジタル,イノベーションを軸とした知的財産の保護や活用を通じて,社会イノベーション事業のさらなる進化とサステナブルな成長をめざす。

日立の成長を支えるため,顧客が求める価値,技術動向,競争力のある知財分析などを踏まえ,価値起点のワールドワイドな知的財産ポートフォリオを戦略的に構築する。また,Lumada事業拡大をグローバルにサポートするため,顧客や関連分野へのLumadaソリューションを支援する知財インフラとポートフォリオを開発する。

CIPO(Chief Intellectual Property Officer)オフィスの下,国内外のグループ各社の連携を強化するとともに,日立グループ内のグループ知財ポートフォリオの活用を推進し,Lumada事業の拡大を支援していく。

イノベーションに貢献するために,知財情報をグループ横断的に推進・共有している。例えば,環境分野では,戦略テーマごとに全世界の特許の評価を通じて,市場ポジションや成熟度の分析を行っている。さらに,知財情報などを活用して,戦略テーマごとに日立の相対的な位置づけを推定・分析している。これらの取り組みを通じて,イノベーションへの貢献をめざしている。

また,知財部門は事業部門と直接連携し,グループ戦略や事業別戦略に基づく知財ポートフォリオの構築を進めている。具体的には,登録により保護される知的財産(特許権・著作権)やそれ以外の知的財産(ノウハウ・営業秘密・機密情報)の保護を含め,知財ポートフォリオを戦略的に構築し,将来の市場機会を予測・保護することをめざす。

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