ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ

水・環境

コネクティブインダストリーズ

1. 山形県東根市役所 水道施設中央監視制御設備更新工事

[01]山形県東根市役所 水道施設中央監視制御設備[01]山形県東根市役所 水道施設中央監視制御設備

山形県東根市の水道事業は上水道および工業用水道であり,庁舎にて水源地・浄水場など18施設の遠方監視制御を行い良質な水道水・工業用水を安定的に供給している。

今回,監視制御設備の老朽化に伴い,庁舎にて各水道施設の集中監視制御をしているLCD(Liquid Crystal Display)監視制御装置および各施設のコントローラ(10セット)の更新を行い,新システムによる遠方監視制御設備を構築した。

・上水道施設(供用開始:1953年4月〜,配水能力:21,000m3/日)

神町駐屯地,前河原水源地,袋田水源地,袋田浄水場,大森山高区配水池,大森山低区配水池,神町配水池,東部中区高区配水池(中区),東部低区配水池,高岡中継ポンプ場,入高区配水池,入低区配水池,横台中継ポンプ場,平配水池,木戸口ポンプ場,岩崎ポンプ場

・工業用水道施設(供用開始:1992年4月〜,契約水量:10,060m3/日)

野田シタ水源地,大森山工水配水池

主な特徴は以下のとおりである。

  1. 制御LAN(Local Area Network)を二重化することで信頼性を向上させた。
  2. 履歴データ復元機能を搭載し,回線異常時に欠損した履歴データの復元を可能とした(履歴データをコントローラに蓄積することで,最大3日分まで復元)。
  3. NAT(Network Address Translation)技術を採用し,LANシングル構成の既設コントローラを庁舎の制御LAN二重化に対応可能とした。

(運用開始時期:2023年4月)

2. 合流改善のための最終沈殿池性能向上技術(傾斜板ユニット)の大阪市納入事例

大阪市では,合流式下水道改善対策の一つとして,下水処理場の施設処理能力を最大限活用した雨天時活性汚泥処理法[3W処理法(Wet Weather Wastewater Treatment Method)]を運用している。その中で,十八条下水処理場では,多階層式最終沈殿池の固液分離性能が律速となり,3W処理水量に制限があった。そこで,固液分離性能を向上させる傾斜板ユニットの適用を検討し,約1年間の実証の結果,処理水量を2.5 Qsh(1.0 Qsh=計画時間最大汚水量)まで増大しても安定的に処理できることを確認した。現在,傾斜板ユニットの設備工事を進めており,一部通水されている。

日立の傾斜板ユニットの特長として,装置のユニット化による設置期間の短縮,傾斜板の昇降による堆積汚泥の滑落促進(自動洗浄)によって自動洗浄中も連続処理が可能な点などがある。さらに,汚泥流出予測モデルを用いて運転支援(アラート表示,ガイダンスなどをモニタで閲覧)を行う予定である。これらにより,合流式下水道の放流負荷の低減,雨天時下水処理の効率化を実現し,水環境の保全に貢献していく。

(株式会社日立プラントサービス)

[02]合流改善のための最終沈殿池性能向上技術[02]合流改善のための最終沈殿池性能向上技術

3. 下水処理場向けAI運転支援技術

下水道事業の消費電力量は国内の約0.8%を占めており,効率的な運転が求められる。さらに熟練者不足も課題となっている。これらに対応するため,日立は維持管理効率化を支援する下水処理場向けAI(Artificial Intelligence)運転支援技術を開発している。

本技術は,監視システムの計測データ・水質検査結果などから現在の処理状態および次に目標とすべき処理水質を推定する目標水質診断処理と,目標の処理水質を満たす中で省エネルギー運転となる設備操作をガイダンスする操作量演算AIにより構成される。本技術により水質を維持した省エネルギー運転となるよう,運転員の操作の支援を実現する。

埼玉県下水道公社と荒川水循環センターにて「AIを活用した下水処理の実用化に向けた共同研究」を通して検証した。2022年9月から2023年8月を通して指定の系統の下水処理設備に本技術を適用し,AI指示による安定した水処理の確認ができた。今後,本技術のサービス事業化などにより下水道業界の課題解決に貢献していく。

[03]下水処理場向けAI運転支援システムの概要[03]下水処理場向けAI運転支援システムの概要

4. 青森県向け初納入「流域治水 浸水被害予測システム」の本格運用開始

[04]2022年8月大雨時のデータを基にした「流域治水 浸水被害予測システム」による中村川の浸水シミュレーション[04]2022年8月大雨時のデータを基にした「流域治水 浸水被害予測システム」による中村川の浸水シミュレーション

青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」を全国で初めて納入し,2023年4月から同県において本格運用が開始された。

本システムでは,国土地理院の地図データに加え,都道府県の保有する河川データや三次元地形データを取り込み,高精度かつ高速に浸水のシミュレーションを行うことが可能である。さらに,シミュレーション結果を活用した避難・緊急活動支援などの機能の拡張性も有しており,国・自治体におけるハード・ソフト両面の流域治水対策に有効である。

なお,シミュレーションには,企業向けに納入実績のある株式会社日立パワーソリューションズのリアルタイム洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood」の技術を活用している。

今後,日立は,流域治水対策に取り組む自治体へ本システムを広く展開することで,大規模水害による被害軽減への貢献をめざす。

5. 産業水処理設備の安定運転支援ナビゲーション

産業水処理設備は工場に必須の設備であり,その故障・異常発生要因は,付帯設備・補機類,外的・環境要因など多岐にわたるため,熟練作業者による異常予兆への対処が必要とされる。一方,少子高齢化により熟練作業者が減少し,非熟練者が設備管理を担当することで対処に苦慮するケースが増えている。

そこで,AIを活用した非熟練者による設備の運転を支援する安定運転支援ナビゲーションシステムを開発した。入力データは,過去の設備稼働状況と熟練作業員の操作・対処履歴をPLC(Programmable Logic Controller)・レコーダや帳票から収集する。そのデータをAI解析することにより,非熟練者の支援内容となる定常操作量や異常候補のリスク指標を出力する。非熟練者は,この出力データを参照することにより設備の安定化が図れ,早期対処による水質の性状悪化防止,作業負担軽減,重大トラブル回避が可能となる。

(株式会社日立プラントサービス)

[05]産業水処理設備の安定運転支援ナビゲーションのシステム概要[05]産業水処理設備の安定運転支援ナビゲーションのシステム概要

6. 脱炭素社会の実現に寄与する250 kW水素混焼発電機の製品化

低炭素社会実現に向けて,水素を高効率に利用できる水素混焼発電機を開発・製品化し,建設機械工場向けに納入した。開発した水素混焼発電機は,ディーゼルエンジンをベースに,従来燃料である軽油と水素の混合燃焼ができる発電機であり,最大混焼率は50%まで可能で,軽油のみの発電と比べて二酸化炭素の排出量を50%削減できる。

本開発にあたり,水素は燃えやすい燃料であるため,水素混焼時の異常燃焼の発生や予兆を検知し,燃料供給を適正量に制御する必要があった。そこで,エンジン燃焼室内の燃焼状態を監視するとともに,回転部に装着された既存電磁ピックアップ信号を用いて燃焼タイミングを推定する機能を開発し,水素混焼時の燃焼健全性を確保し,安全な運転を可能とした。

また,本発電機の水素の混焼率は30〜50%と可変することができ,水素の供給がない場合は,軽油などの従来燃料のみで運転可能であり,使用条件に応じた運転を可能にしている。

日立は,社会のニーズを積極的に吸い上げながら,実用的な水素利用を通じて,カーボンニュートラルへの取り組みを加速させていく。

[06]水素混焼発電機エネルギーシステム[06]水素混焼発電機エネルギーシステム

7. 連続培養を利用したプロセス開発支援技術と培養シミュレーションモデルの高度化

動物細胞を培養槽内で増殖させて生産する抗体医薬品などのバイオ医薬品は,その効果の大きさや副反応の少なさから医薬品市場で主流となりつつある。しかしながら,その製造プロセスは複雑であり,高い生産性で量産可能なプロセス条件を短期間で見いだすことは難しく,開発期間の長期化が課題であった。

これに対し,従来のプロセス開発では困難であった,培養中の環境を一定に保持することが可能な連続培養の特長を生かし,培養条件を変更しながら最適条件を探索する技術を確立した。さらに,これを独自の機械学習と組み合わせることにより,至適培養条件を少ない条件数で求められることをアカデミアとの共同研究開発を通じて確認した。また,得られた重要工程パラメータをモデル化して培養槽シミュレーションに適用し,現在主流の回分培養においても高生産性を実現する培養槽の形状や運転条件を提案可能とした。環境負荷の低減につながる提案として,顧客とのPoC(Proof of Concept)を通じて効果を検証していく。

(株式会社日立プラントサービス)

[07]連続培養を利用したプロセス開発支援技術[07]連続培養を利用したプロセス開発支援技術

8. バイオものづくり分野における培養スケールアップ支援事業向けソリューション

社会課題解決と経済成長の両立を可能とする生物機能による物質生産(バイオものづくり)は,医療・ヘルスケアに加え,今後,素材・エネルギー・食品などの分野でも高い成長が予測される。バイオものづくりの社会実装に向けた技術的な課題は,ラボスケールから生産スケールで物質生産を実現するための「スケールアップ検討」であり,品質を維持しつつ生産性を最大にする培養条件の特定に多くの時間と費用が投入されている。

そこで,顧客のスケールアップ検討を支援し,前述の課題の解決を図るソリューションを開発中である。このために,医薬分野で培った生産スケールの運転パラメータに対する培養状態を予測し培養条件を抽出する培養シミュレーションや,機械学習により必要最小試行数で最適培養条件をラボスケールで特定する実験計画などの技術エンハンス,およびこれらのデジタル化の融合を検討している。

今後,これらを起点にデジタルソリューションを拡充し,バイオものづくり分野の市場成長に向けた支援事業の構築をめざす。

[08]バイオものづくり分野における培養スケールアップ支援向けソリューション[08]バイオものづくり分野における培養スケールアップ支援向けソリューション

Adobe Readerのダウンロード
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated (アドビシステムズ社)のAdobe® Reader®が必要です。